清川村は、相模原市と厚木市の間に位置する、神奈川県で唯一の「村」です。
人口は約2800人で、関東屈指の貯水量を誇る宮ヶ瀬ダムを持つ宮ヶ瀬湖があります。
2022年10月に、この村に「宮ヶ瀬手しごとの家」という素敵な宿泊施設がオープンしましたので、さっそく現地で体験取材をしてきました。
「宮ヶ瀬手しごとの家」はどんなお宿?
「宮ヶ瀬手しごとの家」は、宮ヶ瀬湖のダム工事の際に湖に沈む予定だった伝統的な古民家を移築した建物を、今回、クラウドファンディングなどで多くの方の支援を受け、美しくリノベーションされた宿泊施設です。
横浜から電車で行く場合、相鉄線の海老名駅で乗り換え、小田急線の本厚木駅で下車、そこから路線バスで約50分と、アクセスは少し大変な分、圧倒的な非日常感を満喫できるロケーションです。
エントランスには「手」をモチーフにしたオリジナルロゴがあしらわれた暖簾がかかる門が新設されていて、リノベーションを担当された清川村の地元のベテラン大工さんが「俺の最高傑作だ」と語る素敵な姿でした。
宿泊施設になっている母屋には、個室が合計3部屋(ツインが1部屋、シングルが2部屋)あります。
古い建物の構造を上手に活かした間取りになっていて、各部屋ごとに作り付けのデスクとチェアがあり、パソコン仕事などを持ち込むワーケーション滞在には最適なレイアウトになっています。
「宮ヶ瀬手しごとの家」は、多拠点コリビングサービス「ADDress」とも提携していて、この日はADDress会員の男性利用者さんのお部屋を撮影させていただきました。
宿泊者が利用できるWiFiは速度も十分で、リモートワークなどにも支障は無さそうです。
母屋の各所には、「手」のロゴや、各個室の名前を示す「小田原提灯」がかかっており、素敵な空間を演出しています。
オーナーの桜井さんが価値を感じた「伝統工芸品や民藝品」が各所に配置され、滞在する者の感性に語りかけてきます。さまざまな「手しごと商品」に直接触れながら、もし欲しいと思えば、その場で購入も可能だそうです。
体験取材をさせて頂いた日は「宮ヶ瀬手しごとの家」のオープニングパーティーが開催されたため、宿泊者も利用できる共用キッチンでは、桜井さんの知人のシェフが、来場者に振る舞うお料理を準備中でした。
共用部にはトイレが2箇所、お風呂と洗面所が1箇所あり、すべて新品にリノベーションされていて快適です。
各部屋の宿泊予約は、こちらのairbnbのサイトから可能です。
宿泊する際の注意点としては、宿の前に道路が通っており、深夜でも大型車などが通行する音で目が覚めてしまう可能性があるので、耳栓を持参すると良いでしょう。(ゲストハウスなどで旅慣れている人は、きっと常備していますよね)
離れには「コワーキングスペース」と「売店」も
母屋の左手には「離れ」の建物があり、ここは近い将来「コワーキングスペース」として利用できるようになる予定だそうです。そうすれば、宿の宿泊客だけでなく、近隣の住民の方々も来て働き、交流する場所になるかもしれず、清川村の新たな交流の拠点になる日も近いと感じました。
取材時点では、「離れ」の内装工事が終わったばかりで、まだ備品等は搬入されていませんでした。
オーナーさん曰く、左の壁の棚には、日本各地から取り寄せた日本酒や工芸品などを並べてゆく予定とのこと。
さらには、離れの右側には「販売用の窓口」が準備されており、将来的にはここで酒類の販売などもできたらとのことで、今後の展開が楽しみな仕掛けがいろいろとされていました。
オーナーの桜井さんや仲間たちの想いは、株式会社さとくらしのホームページや、noteなどでも詳しくご紹介されていますので、ぜひ訪問前にお読みになってみてください。
宮ヶ瀬湖畔の公園を散策
「宮ヶ瀬手しごとの家」から徒歩数分で、湖畔の美して広い公園にアクセスできます。
園内には芝生の広場や親水エリアなど、季節ごとに楽しめる場所で、ワーケーション滞在中のリフレッシュには最適な雰囲気です。
この日は祝日のため、園内の売店の近くでは、近隣の店舗が屋台を出して、公園内で飲食を楽しめるイベントも開催されていました。滞在の前にこちらのホームページなどで、催し物などを確認しておくと良いでしょう。
「宮ヶ瀬手しごとの家」から公園に入るルートには、吊り橋もかかっており、ぐるっと一周回って散歩すると、30分くらいのちょうどいい運動になりそうです。
「服部牧場」や「オギノパン」もオススメ!
少し足を伸ばして、車で15分ほど走ったところにある、お隣りの「愛川町」の「服部牧場」にも行ってみました。
牛や羊、ニワトリやうさぎなどが飼育されている場内では、動物たちへの餌やりなどの体験もできて、祝日だったこの日は、多くの親子連れが訪れていました。(金曜日が定休日のようなのでご注意ください)
美味しいジェラートやソーセージも販売されて、その場で食べることも、お土産で買っていくこともできます。
この日は、オープニングパーティーでBBQもあったため、ソーセージを買って、みんなで美味しくいただきました。
「服部牧場」から、さらに車で5分ほど移動すると、相模原市緑区にある「オギノパン 本社工場直売店」もオススメです。
給食パン製造ラインの見学もできますが、何と言っても、焼き立て・揚げたてのパンを頂けるので、ワーケーション中の朝食用などに買っていくと良さそうです。
お土産にも最適な「丹沢あんぱん」は、あんの種類がたくさんあり、どれにするか迷ってしまいます。
二次交通の課題にいかに取り組むか?
今回は、厚木からカーシェアを借りて、宮ケ瀬まで向かったため、宮ヶ瀬湖や周辺エリアにもアクセスできました。
しかし、電車やバスで移動し、数日間の滞在を希望するワーケーターにとっては、宿からの二次交通が課題となります。
今回の滞在時は、土日祝日限定で、特定の乗降場所をスマホアプリから指定すれば、相乗りで移動できる「ぐるっと宮ヶ瀬湖周辺AIオンデマンドバス」が実証実験として運行されていました。(実験中のため料金は無料)
同様の取り組みは、以前取材した「三浦半島」でも実施されていましたが、実験期間終了後は、サービスは継続されていません。
三浦・油壺温泉 ホテル京急油壺 観潮荘 ~初めてのワーケーションにオススメの近場の温泉宿~ワーケーションの実践者は、必ずしも運転ができる人ばかりではありません。
このような乗り合いシャトルサービスは、地域の活性化に寄与する可能性があり、ぜひ土日祝だけでなく、ワーケーターが滞在する平日も含めて実施してほしいところです。
また、ワーケーション施設が独自に「シェア自転車」や「カーシェア」などの移動手段を準備してくれれば、海外からの滞在者も含めて、地域内での移動に便利で、ずっとレンタカーなどを借り続けるより、コスト的にも助かります。
ぜひ清川村の方々には、このような滞在者向けの交通手段の提供について、検討していただけたらと思います。
「宮ヶ瀬手しごとの家」の施設レビュー
小田急線・本厚木駅からバスのため、交通アクセスが最大のネックですが、現地に行ってしまえば、自然豊かな清川村の環境の中でのワーケーション滞在を楽しむことができます。
仕事の環境としても全く支障はなく、さらには離れのコワーキングが稼働すれば、地域の人々との協働も始まるかもしれません。
里の暮らしを疑似体験できるワーケーション
今回の取材中に、以前は清川村で教師をされた後、村議会議員になった30代の男性と語り合う機会がありました。
清川村の水道水は、丹沢の伏流水(湧水)をそのまま使っているそうで、美味しく清潔だそうです。
村民にとっては当たり前な水の魅力を、もっと村の外の人たちにも知ってほしいと熱く語っていました。
この宿に宿泊する旅人、ADDressで暮らす多拠点居住者、そんな人々を受け入れてくれる桜井さんたちホストや村民の方々と共に過ごした穏やかな時間は、あっという間に過ぎてしまい、1泊では足りないなと感じました。
そんな村に暮らす人々と、ワーケーション滞在を通じて交流することで、「さとのくらし」を擬似的に体験できる「宮ヶ瀬手しごとの家」は、都会での生活に違和感を感じている方にとって、新しい人生の選択肢を試すことができる滞在になるかもしれません。
ワーケーションは、このような「いまとは違う暮らし」を体験できる、働き方・暮らし方の選択肢を提供してくれます。週末の観光旅行とは違い、平日に仕事を持って旅先に行くことで生まれる出会いや経験が、きっとあなたの中に、新たな気づきをもたらしてくれることでしょう。
少し勇気を出して、あなたの気になっていた場所に飛び込んでみてはいかがでしょうか?